1. 漏れるかどうかは、サービスの種類と契約条件で決まる
AI事業者が公表している法人向け・API向けの条件を見ると、入力した内容を学習に使わないことを既定にしている例があります。Anthropic は、Claude for Work や API などの法人向け製品について、入力と出力を既定ではモデルの学習に使わないと説明しています。ただし、利用者が不具合報告などのフィードバックを送った場合や、データの利用を自ら許可した場合は、学習に使うことがあるとしています。同社は個人向けの Free、Pro、Max は別の扱いだと明記しており、同じAIでも契約の種類で条件が異なります(Anthropic のプライバシーセンター、2026年8月18日更新の表示)。
OpenAI も API について、2023年3月1日以降、API に送ったデータは、利用者が明示的に共有を選ばない限り、モデルの学習や改善には使わないと公開しています。一方で、不正利用の監視のためにプロンプトと応答を含むログが既定で最長30日間保存されます。このログの対象から外せるのは、OpenAI の事前承認を受けた利用者に限られます(OpenAI の開発者向け資料)。つまり「学習に使われない」ことと「どこにも残らない」ことは別の話です。
当社の見方 無料の個人アカウントで社員が各自に資料を貼り付ける使い方と、法人契約やAPIで条件を確認したうえで使う方法とでは、リスクの大きさが違うと当社は見ています。会社として何も決めない場合の代価は、禁止していても社員が個人アカウントに見積書や取引先名簿を貼り付け、どの資料がどの条件のサービスに渡ったのか、あとから誰も追えなくなることです。同業が法人契約と社内ルールを整えて使い始めれば、その会社は取引先から求められる情報管理の説明にも答えられます。まず、使っているAIサービスの契約の種類と、学習への利用・ログ保存の条件を一覧にすることを勧めます。一覧は、社員が個人アカウントを使っているかどうかを確認してから作るのが確実です。
2. 個人情報を入れる場合は法律の確認が先
個人情報保護委員会は2023年6月2日に、生成AIサービスの利用に関する注意喚起を出しています。事業者が個人情報を含むプロンプトを入力する場合は、特定した利用目的の達成に必要な範囲内であることを確認するよう求めています。また、本人の同意なく個人データを含むプロンプトを入力し、その個人データが応答の出力以外の目的で取り扱われる場合は、個人情報保護法に違反することとなる可能性があるとしています。そのため、このような入力をする場合は、サービス提供事業者が個人データを機械学習に利用しないことなどを十分に確認するよう求めています(個人情報保護委員会)。
顧客名簿、従業員の情報、取引先の担当者名を含む書類は、この確認の対象になりえます。実務では、AIに渡す前に、書類のどこに個人情報が含まれるかを確認し、不要な部分は伏せるか、そもそも渡さない運用にします。
3. 当社のAI事務アシスタントの扱い
当社のAI事務アシスタントのページには、原本は御社の機器に置いたまま扱い、当社のサーバーには保存しないと記載しています。標準プランでは、下書きの生成に必要な文面だけを外部のAIに送ります。完全社内型は月額29,800円(税別)で、AI本体も社外に出さず、文面の生成まで社内で完結します。標準プランは3名まで月額4,980円(税別)で、外部AIの利用料は御社からAI事業者へ直接お支払いいただきます。下書きは担当者が確認してから送るため、AIの出力がそのまま社外へ出ることはありません。
当社の見方 送る範囲を「下書きに必要な文面だけ」に絞るのか、完全社内型にするのかは、書類に取引先名と単価が入っているか、顧客の個人情報が入っているかで分けられます。当社は、取引先名と単価を含む見積書は完全社内型から検討し、取引先名を伏せられる返信文の下書きは標準プランでも足りるかどうかを見るのが順序だと考えます。外部AIに送る文面に何が含まれるかを、導入前の見本作成の段階で御社に確認していただくことが前提です。この確認なしに外部へ送り始めると、取引先との秘密保持の約束に触れていないかをあとから調べ直す手間が生じます。
4. 導入前に確認する項目
- 入力内容が学習に使われない契約か:個人向けか法人向けか、フィードバックの送信で例外が生じないか。
- ログの保存期間:OpenAI の API は不正利用の監視用に既定で最長30日間保存されます。保存しない設定には事前承認が必要です。
- 個人情報の有無:含まれる場合は、利用目的の範囲内か、サービス提供事業者が機械学習に利用しないかを確認します。
- 原本の置き場所:AI事業者に渡るのは文面だけか、ファイルそのものか。
- 社員の個人アカウント:会社として使ってよいサービスと、貼り付けてはいけない資料の種類を文書にします。
まとめ
漏れるかどうかは、AIの種類ではなく、契約の種類、ログの扱い、渡す範囲で決まります。学習に使われない条件を公表している事業者はありますが、ログは別に保存されることがあり、個人情報を含む場合は法律上の確認も要ります。当社のAI事務アシスタントの導入前相談は、お問い合わせからお受けしています。
この記事に関するよくあるご質問
社内の資料をAIに読ませると、学習に使われて外部に漏れませんか。
法人向け製品やAPIでは、入力を学習に使わないことを既定にしている事業者があります。Anthropic の法人向け製品や OpenAI の API が該当しますが、フィードバックの送信や利用者の許可があれば例外になり、個人向けサービスは別の条件です。契約の種類と学習・ログの条件を、使う前に確認してください。
AIに顧客の個人情報を含む資料を渡しても問題ありませんか。
個人情報保護委員会は、本人の同意なく個人データを含むプロンプトを入力し、応答の出力以外の目的で取り扱われる場合は、個人情報保護法に違反する可能性があるとしています。入力前に利用目的の範囲内かを確認し、サービス提供事業者が機械学習に利用しないことを確かめます。不要な部分は伏せて渡します。
参考
- Anthropic Privacy Center, Is my data used for model training? (2026-08-18)privacy.anthropic.com
- OpenAI, Data controls in the OpenAI platformplatform.openai.com
- 個人情報保護委員会 生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について(2023-06-02)ppc.go.jp